老健の仕事内容は?
老健って実際何をするの?
自分にもできるかな?
といった疑問にお答えします。
老健で働いた時のタイムスケジュールなどを使ってわかりやすく説明していきます。
老健とはどんな施設か
老健の仕事内容
正・パ・派 別の仕事内容
老健のタイムスケジュール
その他役職の仕事内容
老健に向いている人、向いていない人
老健はどんな施設?
老健の正式名称は介護老人保健施設と言われており、主に医療機関が運営しており、介護、医療、機能訓練などの支援を行い在宅復帰を目指す入所施設です。
利用者は65歳以上で要介護認定を受けている要介護1〜5の高齢者または、特定疾病により要介護認定を受けている40〜64歳の方となっております。
在宅復帰を目指す施設ですので特養のような終わりの棲家にはなり得ず、入所期間は3ヶ月から1年程度となっております。
老健の仕事内容とは
老健には介護士を始め、医師、看護師、理学療法士など、様々な職種が混在し全ての分野から連携して利用者の在宅復帰を目指します。
利用者の人数は施設の部屋数によって定員数が違い、職員は利用者の1/3の人員基準が必要なため、利用者が60名いれば職員は20名以上必要となります。
主な仕事内容は、一般的な食事、入浴、排泄介助やレクリエーションなど、特養とほとんど一緒です。
しかし、在宅復帰を目指している老健では、その一般的な介助1つひとつを医療面、機能面からの視点でとらえる必要があるため、看護師や、作業療法士、理学療法士の意見を元に、利用者にあった介助方法で支援していきます。
老健においての食事介助
医師、看護師の指導のもと利用者にあった食事が提供されます。介護職員はその指導のもと咀嚼(噛む)の状態、嚥下(飲み込み)の状態をよく観察し、食事介助を行います。
その他にも食事前の嚥下体操や、食後の口腔ケアなども介護士の仕事です。
老健においての食事に関して特徴的なのが、老健は医療の場なので、経口摂取できない方のための経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)を行う行為が他の事業所に比べて多くなります。
これは医療行為にあたり、以前は医師や看護師しか行えませんでしたが、制度が一部改正され、介護職員でも、一定の研修を受ければ行うことができるようになりました。
また同様に、たんの吸引も医療行為でしたが研修を受けることで、介護職員でも行うことができるようになりました。
老健においての入浴介助
医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの指導のもと、利用者にあった入浴介助を提供します。
主に機能訓練の視点から入浴介助をすることが多く、衣類の着脱や洗体も出来る限り自分で行なってもらう事で身体機能の維持、改善を図ります。
そのためただ介助を行うだけでなく、利用者の身体機能がどうしたら、改善するかなどを考えながら入浴介助をする必要があります。
利用者のその日の体調に合わせて入浴の有無を決めたり、体調によっては入浴できず、清拭を行うこともあります。
身体不自由な方は個別で機械浴(リフトなど)で入浴します。その他にも職員は入浴中の利用者の顔色や体調の変化などに気をつけ、見守ることも大切です。
老健においての排泄介助
医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの指導のもと、利用者にあった排泄介助を提案します。
排泄の動作1つひとつを機能訓練、自立支援の視点で捉え、出来るところは本人にやってもらいながら見守りや介助を行います。
本人にやってもらうといっても、無理をせず、介護職員は安全第一でゆっくりと改善できるように努めます。
また、おむつの人もいるかと思いますが、おむつだから交換だけすればいいということではなく、おむつの人でも尿意、便意の改善のために、利用者がトイレに行きたい時にはト連れて行くことも大切になってきます。
レクリエーション
老健でいうレクリエーションは利用者が楽しめることはもちろんですが、機能改善のためのレクリエーションも行います。
例えば、カラオケを行い、大きな声で歌うことで肺活量が増えると同時に呼吸機能の改善を図ったり、風船バレーなどで手をあげることにより、関節の可動域を増やしたりするなど機能訓練の視点からレクリエーションをおこなうことが大切です。
老健の夜勤について
老健の夜勤は施設によっても違いますが介護職員数名と看護師最低1名で勤務することになります。
人数も多いので何もなければ仮眠もとることができます。
夜勤の内容は時間でトイレ誘導やおむつ交換、体位交換などをおこなうことがメインでその他記録を書いたりするなど、ある程度時間に余裕はあります。
何か特変があったとき看護師がいてくれると心強いですよね。
ひこ
老健は在宅復帰を目的とした施設なので、医療ケアや機能改善のための支援をすることが大事になります。そのため、食事、入浴、排泄、レクリエーションなどの業務は身体機能の改善を意識しておこなうように心がけましょう。
正社員の仕事内容
正社員で働いたからといってやることはパートや派遣とさほど変わりありませんが、違う点といったら仕事に対する責任感の重さと、夜勤があることくらいです。
中には医療行為もやるんじゃないの?という人もいるかもしれませんが、介護職員の医療行為は禁止されています。しかし、研修をうけることで、一部の医療行為ができるようになります。それが喀痰吸引等研修(かくたんきゅういんとうけんしゅう)です。
この研修は、たんの吸引(口腔、鼻腔、気管カニューレ)や経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)などの一部医療行為を介護職員でもおこなえるようになる研修です。
医療の多い老健には最適な資格といえるため、介護士がたんの吸引や経管栄養の処置ができれば施設側からも必要とされます。
老健は入所型の施設なので24時間体制で介護が必要です。そのため夜勤もあり利用者の人数が多いので複数名でおこなうことになります。
ひこ
介護職員はあくまでも介護職員です。資格のない医療行為は絶対におこなわないようにしましょう。確かに老健では医療行為の必要な方が多いですが、そのために医師や複数名の看護師が人員基準として配置が義務付けられています。施設によってはこのぐらいできるでしょと医療行為をやらせようとする施設もあるので何かあっても責任が取れないのでと必ず断りましょう。
パートの仕事内容
パートで働いたとしても基本的な仕事内容としてはあまり変わらず、一般的な身体介護(食事介助、入浴介助、排泄介助)が主な仕事です。
施設の業務で一番危険が多く、人手を使うのが入浴介助です。人手を多く使う理由として、単純に効率をよくするためでもありますが、入浴中の事故は命の危険に関わるため人手を増やし、観る人を増やすという目的もあります。
午前中の入浴が一般的で、人数が必要なため、午前中だけパートで働くといった方も多く見られます。
ひこ
パートとして働いた場合でも、早番、日勤、遅番などの不規則な勤務になることがありますが、決まった時間(9:00~18:00など)だけ働きたいという方でも探し方によっては日勤だけでも働ける施設もあるのできちんとした探し方をすることで自分に合った働き方ができるようになります。
施設によってはフルタイムのパートしか雇用しないという施設もあるため、よく確認することが重要です。
派遣社員の仕事内容
小規模多機能の派遣はフル勤務で夜勤などもある場合がありますが、正社員ほどの責任もないので働き方としては正社員とパートの間といえます。
派遣社員は日中の業務に加え、夜勤に入ることもあります。その場合は正社員に近い働き方になるでしょう。
また派遣社員には夜勤専従といった働き方もあり、名前の通り夜勤だけの働き方です。
その場合、日給として23,000円~28,000円の収入になります。
ひこ
派遣の働き方としては通常の派遣のほかに紹介予定派遣という働き方があり、数か月派遣社員として働き、その後双方の同意のもと施設の職員になるといった働き方です。しかしこの場合の給料は施設の給料に依存するため派遣の時より給料が安くなってしまうことがあるので注意が必要です。
老健のタイムスケジュール
ここで老健の1日のタイムスケジュールを確認してみましょう。
老健の早番 正・パ・派
7:00 起床介助
まだ寝ている利用者を起こし、着替えや整容整髪をしホールまで誘導する。
7:30 朝食介助、口腔ケア、下膳
食事介助が必要な方の介助をおこない、その後歯磨きや入れ歯の洗浄などの口腔ケアや食後の片付けをおこなう
8:30 申し送り
夜勤者から前日の状況や夜間の状況などの報告を受ける。
9:00 入浴準備
浴槽をサッと洗ったり、タオルの準備をするなど入浴の準備をおこなう。看護師と共に入浴する利用者のバイタルを測り、入浴できるかを確認する。
10:00 入浴介助
1日で複数名の利用者を介助することになります。一人で歩くことができる人は一般の浴室、寝たきりなどの人は機械浴と別れて介助することが一般的です。
12:00 休憩
13:00 記録記入、排泄介助
介護記録を記入し、おむつ交換などが必要な方の排泄介助をおこなう。
14:00 レクリエーション
季節の行事や、機能訓練を意識したレクリエーションをおこなう。
15:00 おやつ介助、記録記入
介助が必要な方のおやつ介助をし、その後残った介護記録を記入。
16:00 勤務終了
老健の日勤 正・パ・派
8:30 申し送り
夜勤者から前日の状況や夜間の状況などの報告を受ける。
9:00 居室や施設内の掃除、体操
日勤者は数名いるので半分が掃除、半分がラジオ体操などをおこなう。
10:00 入浴介助
主に早番が洗体をおこなうため、浴室への誘導や、着替えなどをおこなう。
11:30 片付け、食事配膳
入浴介助後の片付けを終えた後、昼食の配膳をする。
12:00 昼食介助、口腔ケア、下膳
介助が必要な利用者の食事介助をおこない、終わったら、歯磨きの手伝いや入れ歯の洗浄などの口腔ケアをおこなう。
13:00 休憩
14:00 レクリエーション
季節ごとの行事や機能訓練を意識したレクリエーションをおこなう。
15:00 おやつ介助
介助が必要な方のおやつ介助をしながら利用者とコミュニケーションをとる。
16:00 排泄介助
おむつ交換などが必要な方の排泄介助。
17:00 記録記入、申し送り
場合によっては利用者とコミュニケーションをとりながら介護記録の記入し、夜勤者へ前日の状況や夜間の状況などの報告をする。
17:30 勤務終了
老健の遅番 正・パ・派
10:00 記録確認、排泄介助
申し送りを受けていないため記録の確認をおこない、詳しくは他のスタッフに確認する。その後、おむつ交換などの排泄介助をおこなう
11:00 ホール見守り、お茶出し、嚥下体操
ホールの見守りをしつつ、入浴後の利用者に水分補給をしてもらう。食前には飲み込みをよくするための嚥下体操をおこなう。
12:00 昼食介助、口腔ケア
介助が必要な利用者の食事介助をおこない、終わったら歯磨きの手伝いや入れ歯の洗浄などの口腔ケアをおこなう。
13:00 休憩
14:00 レクリエーション
季節ごとの行事や機能訓練を意識したレクリエーションをおこなう。
15:00 おやつ介助
介助が必要な方のおやつ介助をしながら利用者とコミュニケーションをとる。
16:00 排泄介助
おむつ交換などが必要な方の排泄介助。
17:00 記録記入、申し送り、嚥下体操
場合によっては利用者とコミュニケーションをとりながら介護記録の記入し、夜勤者へ前日の状況や夜間の状況などの報告をする。
18:00 夕食介助、口腔ケア、片付け
介助が必要な利用者の食事介助をおこない、終わったら歯磨きの手伝いや入れ歯の洗浄などの口腔ケアをおこなう。
19:00 勤務終了
小規模多機能の夜勤 正・派
17:00 記録確認、申し送り
日中の介護記録の確認や日勤者から前日の夜間の状況や日中の状況などの報告を受けます。
18:00 夕食介助、口腔ケア、片付け
介助が必要な利用者の食事介助をおこない、終わったら歯磨きの手伝いや入れ歯の洗浄などの口腔ケアをおこなう。
19:00 排泄介助、就寝介助
就寝前にトイレ誘導やおむつ交換などの排泄介助、パジャマに更衣などの就寝介助をおこなう。
20:00 記録記入、見守り
ホールに残っている利用者がいれば見守りをしつつ介護記録の記入
22:00 巡回、排泄介助、体位交換
各部屋の見回り、必要な方の排泄介助、体位交換
24:00 巡回、排泄介助、体位交換
各部屋の見回り、必要な方の排泄介助、体位交換
1:00 仮眠
交代で仮眠をとる
2:00 巡回、排泄介助、体位交換
各部屋の見回り、必要な方の排泄介助、体位交換
4:00 巡回、排泄介助、体位交換、起床介助
各部屋の見回り、必要な方の排泄介助、体位交換。早い利用者はこの時間で起きてくるので随時起床介助。
6:00 記録記入、起床介助
夜間の記録を介護記録に記入し、随時起きてきた利用者の起床介助。
7:00 起床介助
まだ寝ている利用者を起こし、着替えや整容整髪をしホールまで誘導する。
7:30 朝食介助、口腔ケア、片付け
介助が必要な利用者の食事介助をおこない、終わったら歯磨きの手伝いや入れ歯の洗浄などの口腔ケアをおこなう。
8:30 申し送り
日勤者へ前日の状況や夜間の状況などを報告する。
9:00 記録の記入
利用者やスタッフとコミュニケーションをとりつつ、ゆっくりと記録記入する。
10:00 勤務終了
ひこ
上記のスケジュールはあくまでの一例です。基本的に時間で決まっておりますが、その日の状況や、利用者の状況などによっても変わることがありますので注意が必要です。
その他役職の仕事内容
利用者100名までの老健の人員基準として
- 医師1名
- 看護師 複数名
- 支援相談員1名
- 栄養士1名
- 介護支援専門員1名
- 調理員、事務員 必要数
が必要とされています。それぞれの仕事内容を見てみましょう。
医師
老健において常勤の医師が1人は必ず必要となっており病院と併設されている場合は非常勤でも可能です。そのため老健で仕事をするというよりは診察や予防接種などの時に往診するといったことが一般的です。
看護師
仕事内容的には、介護職員と同等の仕事に加え、医療行為もおこないます。利用者の体調の変化に気を付けつつ、特変時には適切な処置をおこないます。
支援相談員
特養や有料老人ホーム、デイサービスなどに配置される生活相談委員と似た仕事内容で、入所時の相談やレクリエーションなどの計画を主におこないます。
特に大事な仕事として在宅復帰へ向けての支援、在宅復帰した後の支援があります。在宅復帰に向けての支援として、スタッフへリハビリ方法の提示なども大事な仕事です。
栄養士
毎日の栄養や季節的なものをバランスよく考えて献立を決め、利用者の咀嚼(噛む)能力に応じて料理を細かくするといった指示を出します。
介護支援専門員
介護戦専門員はケアマネージャーとも呼ばれており、主な仕事内容は利用者一人ひとりのケアプランの作成です。
利用者一人ひとりの状態にあった計画書を作成し、目標に向けて実行していきます。
調理員、事務員
必ずしも必要ではないですが、利用者が増えれば必ず必要になります。調理員は栄養士の指示のもと栄養バランスを考えた料理を心がけます。事務員は受付や事務手続きなどをおこないます。
老健に向いている人、向いていない人
老健に向いている人
老健は他業種もたくさんいるので、介護の仕事をやっていく上で必要な経験をたくさん得ることができるため、勉強家で介護以外の分野の知識も知りたいという人に向いています。
また、医療面でも知識が身につくので、家族などが病気になったりした際もその知識が役に立つこともあるでしょう。
老健に向いていない人
老健の目的は在宅復帰で、医療が必要な方も多くいます。胃ろうや腸ろう、ストーマ(人工肛門)などを付けている人もたくさんいるのでそういった方の介助をするのが心配だという人には向いていないかもしれません。
入所型なのでもちろん夜勤もありますので夜勤をやりたくない人には向いていないと言えます。
とはいえ、他業種が豊富で特に看護師がいることで、緊急時も慌てることが少なくなるので働きやすいともいえます。
老健に向いている人
- 介護だけに問わず、色々な知識を覚えたい人
- 緊急時の対応が不安な人
老健に向いていない人
- 胃ろうやストーマの方の介助が心配な人
- 夜勤が苦手な人
おわりに
特養が生活の場と言われることに対し、老健は医療の場とも言われており、利用者のほぼ全員が在宅復帰を目指し医療や、リハビリ、介護などの支援を受けます。
他業種が多くいるので意見の食い違いや、納得のいかないこともありますが、介護士としての仕事を色々な視点から見ることができ、知識を身につけるにはうってつけです。
注意して欲しいのは禁止されている医療行為は絶対におこなわないことです。
100歩譲って看護師がいなかったとしても、医療の知識を持たない介護士が医療行為をおこなって、もしものことがあったら責任を取ることができません。
施設によっては簡単な医療行為をやらされるところもあります。しかし、「このくらい平気」が大きな事故を起こしてしまうこともあるので、仮に医療行為を頼まれたとしても、しっかりと断ることのできる介護士を目指しましょう。
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